「新幹線変形ロボ シンカリオン THE ANIMATION 」は2018年1月からTBS系列で放送されているテレビアニメである。これの基となる「新幹線変形ロボ シンカリオン」は、ジェイアール東日本企画・小学館集英社プロダクション・タカラトミーの3社によって立ち上げられたプロジェクトにより開発され、アニメより数年前の2015年3月から既に展開されているとのことである。
「シンカリオン」とは、新幹線が変形した巨大ロボットであり、「巨大怪物体」という正体不明の巨大な敵に立ち向かうため、日本の夢と技術が詰まった新幹線をベースに開発されたもの、という設定である。
要するに、子供向けの、子供ウケする新幹線が出てくるアニメなんだろ、と最初は思った。ところが、である。どうもこのアニメ、表向きは子供番組として作られているが、中に仕込まれている数々のネタが、どう見ても視聴する子供らの後ろで見守っている親世代を狙ってやっているとしか思えないだろうという要素が多すぎるので、ここに記録しておくこととする。なお、東洋経済オンライン記事「シンカリオン、「鉄」は見ないともったいない 」も御参考。
中でも特筆すべきは、2018年8月に放送された、「神回」とも称されるエヴァンゲリオンとのコラボを果たした第31話である。詳細は既に東洋経済オンラインの記事(シンカリオン×エヴァ「神回」誕生の秘密 )で解説されているのでそちらに委ねるが、そもそもシンカリオンの放映開始当初から、エヴァンゲリオンとの共通性(巨大戦闘ロボットを、選ばれた子供だけが操縦できる)は言われていたものの、著作権・版権・放送局の違い等の「大人の事情」という高い壁があるので、ここまでガッツリとコラボができるとは誰も想像していなかった。
さらに言うと、エヴァンゲリオンのアニメが最初にテレビで放送されたのは1995年から96年あたりと、今の子供らが生まれるずいぶん前であり、その後に劇場版などでも続いているとはいえ、エヴァンゲリオンのファン層のコアは、どう見ても今の子供らではなく、その親世代だ。コラボ回を観て喝采を上げたのは、テレビの前の子供らよりも、むしろその後ろで見ていた親の方が多かったに違いない。
この他にも、ストーリー本編からは脇道に逸れたパロディがふんだんに散りばめられている。代表的な例で言えば、12月に放送された分で、JR東海のクリスマス・エクスプレスCM完コピシーンが山下琢郎のクリスマスイブのソングと共に流れた。以下、著作権的にはグレーなのでいつまで見られるかはわからないが、YouTubeに掲載された放映時の動画等詰め合わせ。
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それにしても、クリスマス・エクスプレスの深津絵里verは1988年、牧瀬里穂verが1989年って、今の親世代ですら知らん人も多いのではないかと。
他に確認できる限りでのパロディ、他作品からのネタでは、ブラタモリ(NHK)、タモリ倶楽部(テレビ朝日)、クイズミリオネア(フジテレビ)、アメリカ横断ウルトラクイズ(日本テレビ)と、エヴァンゲリオン(テレビ東京)も入れれば他局全制覇という状況である。それも、親世代ですらもう知らんかもという結構古い番組もある。いったい誰を喜ばせたいのやら。これらのパロディのクオリティも高く、全力でやっているところがすごい。この作風、何かに似ていると思ったら、2016年にTBSで放送されたドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」でもクオリティの高い全力のパロディ・オマージュがちりばめられていたことを思い出した(全然観てないけど)。(※後日追記:掲載当初は何も知らずに書いていたのだが、シンカリオンのプロデューサーN氏は、「逃げ恥」のプロデューサーと同一人物だった。どうりで。なお、この後の放送回でも「逃げるは萩だが薬院大通り」というあからさまなパロディーシーンが登場した。)
こうした枝葉も面白いのだが、もちろん本編のストーリーやロボット戦闘シーンなどもお約束を押さえたうえでしっかりと筋が通っておりブレない。しかも、単純な勧善懲悪ではなく、敵側として出てくる勢力も、何やら生き残りをかけてやむに已まれぬ事情で侵攻しているという背景が見えてきており、最後に敵ボスを倒してめでたしめでたしというような安直な結末にはならんのではと感じている。そうした筋書きも昔どこかで似たようなアニメがあったなと振り返ると、「赤い光弾ジリオン」(1987年)という作品のラストを思い出した。シンカリオンは3月に本編終了予定とのことで、今後どう展開していくのかも目が離せない。まさにOPテーマ曲歌詞にもあるとおり、「誰にも止められない」シンカリオンである。
本編動画も、関係者の公式YouTubeチャンネルで、テレビ放映の1週間遅れで期間限定だが公開という太っ腹ぶりである。うち最初の第1話だけは今のところずっと公開され続けている。そのうちビデオも発売されるだろうからいつまで見られるかは不明だが、ひとまず埋め込み。保線作業から始まるイントロシーンは、かの庵野秀明氏も絶賛。ひょっとしたら、この作品も将来はガンダムやエヴァに比肩する名作として記憶されることになるかもしれない。
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