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アディクトを待ちながら

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久々に映画鑑賞。以前、仕事との関連で「依存症」について学ばねば、ということで、ギャンブル依存症やゲーム依存症について、識者や当事者の話を伺って、依存症についての認識はある程度は承知していたところ、今般、ギャンブル依存症問題を考える会が製作した映画が上映されるとの話を聞き、ようやく観る機会を得た。

メジャーな映画館では上映されておらず、UPLINK京都という、京都の新風館にある映画館を初訪問(※当該作品上映はこの館ではその後終了)。タイトルは「アディクトを待ちながら」。

アディクト、とは依存症患者のことである。同映画サイトからあらすじをそのままいただくと以下のとおり。
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数々のヒット曲を持つ大物ミュージシャン、大和遼が覚醒剤と大麻の所持で逮捕された。人々は驚き、落胆し、大きなニュースとなった。あれから2年。依存症患者らで結成されたゴスペルグループ「リカバリー」が音楽ホールでコンサートを開こうとしていた。そのメンバーには大和の名前があった。あの事件以来、沈黙を守ってきた大和がついにカムバックする。出演の知らせを聞いたコアなファンが続々と会場前に集まった。薬物、ギャンブル、アルコール、買い物、ゲームといった依存症者で構成される依存症ゴスペルグループ「リカバリー」。メンバーたちは互いに支え合い、スリップ(依存性物質に再び手を出すこと)することなくコンサートにこぎつける。しかし、大和は開始時間を過ぎても現れない。逃げたのか?それともスリップ?果たしてコンサートは開催できるのか——。
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(ネタバレバリア(これも久しぶり))

(以下ネタバレ注意)
主人公の大和遼を演じるのは俳優の高知東生氏。氏自身も以前に覚醒剤と大麻使用の容疑で逮捕されたという経緯があり、芸能界の表舞台からはご無沙汰という状況でのこのキャスティングはかなり大胆である。それ以外にも、ゴスペルグループに属している他のアディクトのメンバーを、実際に依存症患者だった人が複数演じているというリアリティ。

大和遼が復活を遂げるというコンサート開始間際になっても、まだ当の大和本人がやってこない。何人かが、スリップしたのではないか、いやそんなことはない、という話を、各人のエピソードをフラッシュバックしつつ、来るのか、来ないのか、ジリジリと待つ展開が続く。

コンサートの開始時間を遅らせて様子を見る中、待たされている観覧希望者から繰り出される様々な意見こそが、世間一般の依存症に対するステレオタイプの反応を示しているのだろう。

「依存症」に対してどのように対処するのがベストかについては、Youtubeのせやろがいおじさんが実に端的に動画で説明されている。

自分の場合は、講義などを通じてある程度予備知識があったから、なるほどそうだそのとおりだとそれらを再確認する感じだったが、初めて目の当たりにした人は、相当な衝撃を受けることだろう。

そしてこの映画から伝わってくる最も強い意見は、一旦依存症に陥ったが何とか回復して頑張っている人たちに対し、世間の目が何と冷たいことか、という憤りであろう。依存症から回復している人は、依存の元をやめ続けているという絶え間ない努力をしている。これは障害を持つ人が、その障害がありつつも残された機能で巧みに力強く生きているのとパラレルに評価できる事象なのに、アディクトに対する評価は、ほぼない。また、一度失敗しただけなのに二度と社会復帰を許さないような、不寛容な社会、特に日本独特の、水に落ちた犬をさらに叩きまくるような雰囲気に対して、異議を唱えている、と感じた。

ちなみに、私は依存症などならない、自分とは無関係だと思っている人こそ気をつけたほうがよい。依存症は誰にでもなり得る落とし穴であり、実は依存症であってもそれが日常生活に支障ない程度で収まっているだけなのかもしれないのだ。

例えば私は確実にスマホ依存症に陥っているが、程度が低いため日常の問題が露呈していないだけなのだ。マラソンに関しても、入れ込みすぎて、故障しているにも関わらず走らずにはいられない、というランナーの話も聞くが、これはランニング依存症だろう。ワーカホリックだって、仕事依存症。いま流行りの「推し」活動だって、身上を潰すレベルまで行き過ぎれば依存症だ。依存症の人と、そうでない健常者とに厳然たる境界線があるわけではなく、なだらかで曖昧なグラデーションでしかないのだ。

さて、映画本編について最後に最大のツッコミをさせてもらうなら、「お前ら、結局一個も歌わへんのかいっ」。薄々そうなるかもと予想していたが、まさにそのとおりであった。

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