がんばれHTV/H2B
今日は米国同時多発テロから8年目の日でもあるが、それは触れずにたまには明るい話題を。
本日午前2時01分46秒、種子島宇宙センターからH2B型ロケットが打ち上げられた。今のところミッションは順調のようである。このロケットに積まれたのがHTV(H-II Transfer Vehicle)と名づけられた、国際宇宙ステーション(ISS)へ物資を運ぶ補給機だ。
実に地味なミッションなのだが、重責を担っている。というのも、米国NASAのスペースシャトルは間もなく運用を終了する予定で、ほかに欧州のロケットやロシアのソユーズもあるのだが、打ち上げ能力が足らないため、シャトルに代わる大型の輸送手段がなくなってしまうのだ。その空白を埋めるべく開発されたのが日本のHTVというわけだ。うまく行かなければ世界中が困るところだったのだ。
その大容量補給機を打ち上げるためのロケットがH2Bである。これまではH2Aというロケットを用いていたが、打ち上げ能力を高めるためにバージョンアップされたものである。このH2Bロケット、かなり安上がりで開発できた。それは、今までH2Aロケットで使ってきた液体ロケットエンジン(LE-7A)を、1つから2つを束ねるように変えただけ、さらに、補助ロケットである固体ロケットブースター(SRB-A)を2本から4本に変えただけ、という地味なバージョンアップだからである。
しかし地味だ地味だと侮るなかれ。そもそも機械やらシステムやらで、最新の技術を用いて初めて造ったものは、得てして得体の知れないバグやら不具合を抱えているのが常である。これらを1つ1つ潰していってようやく安定して使えるようになる。いわゆるバスタブ曲線というやつだ。今回のH2Bは、これまでのH2Aで培った、よく言えば信頼性・安定性のある、悪く言えば枯れて陳腐なテクノロジーを再構築したものなので、初号機でありながら、発射予定時刻から遅れることもなく、一発で成功させることができたのだ。
同じ様な事例としては、日本の誇る新幹線も挙げられるだろう。あれも、斬新なように見えて、導入された技術はそれまでの鉄道で脈々と培われたものを組み直しただけなので、いきなりでもうまく機能したし、今日まで安定した運用ができているのである。「最新の技術」を用いたリニアモーターカーがなかなか実用化しないのと対比させて見ればそのニュアンスが理解できることだろう。
さて昨今の経済不況で日本の製造業も大ダメージを受け、アジアの安い製品に押されるという暗い話が続いているが、今回の成功をきっかけとして、再度日本のモノ造り技術に自信を取り戻してもらいたいものだ。産業革命よりもはるか前、江戸時代から培われた匠の業はそう簡単にへこたれてしまうわけにはいかない。
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