飛翔体の正体
先日5日は、朝鮮民主主義人民共和国が「人工衛星」と称する「飛翔体」(こんな言葉も普段使わぬが)を打ち上げたとやらで日本中、いや世界中がてんやわんやだったとか。
しかし、米軍の情報では結局何も軌道に乗らなかったようだし、北朝鮮が発表している衛星から発せられているという電波も全く観測されていないところを見ると、少なくとも人工衛星の周回軌道投入が目的であれば、それは失敗だったと考えられるだろう。
おそらくは、人工衛星などは何も作っていなかったのではないかと思われる。というのも、ただでさえ経済的に困窮しているあの国で、高価な衛星まで作る余力はないはずだ。とにかく軌道まで打ち上げられるロケットだけを、なけなしの金をつぎ込んで、日本の電子製品を組み込んで、作ったに違いない。
ではその目的は何か。日本への攻撃か。それは違う。本当に日本を攻撃する気なら、あれだけ手間の掛かるたいそうなロケットを作らずとも、中距離ミサイルで十分だ。そもそも発射前にあれだけ準備するのがバレバレでは軍事的には全く無意味だ。日本のイージス艦やPAC3の対応も、茶番であるということは、やっている自衛隊の当人らは痛いほどわかっていながら政治的思惑で駆り出されたに違いない。
では米国の攻撃が目的か。それもちょっと違う。本当に米国を攻撃する気なら、あれだけバレバレでやるはずがないのは日本同様だ。もし1発でも米国領に爆弾を落とそうものなら、報復の軍事侵攻を受けてイラクかアフガンのようなことになるのがオチだ。ちなみに、北朝鮮はこれまで散々挑発を繰り返しながらも、朝鮮戦争の最初以外は軍事的先制攻撃をしたことがないという点にも留意すべきだろう。先に手を出せば終わり、ということはよくわかっているのかもしれない。無論、拉致など卑劣な行動は繰り返しているのだから、到底誉められる話ではないが。
真の目的は、米国を交渉の座に引きずり出して、米国と対等にやらせろというメッセージを送ることなのだろう。韓国や日本ははじめから無視しているのだ。核兵器を開発し、米本土まで届くロケットを開発し、「俺を無視すると大変なことになるぞ」と訴えているのだ。例えは悪いが、かまってかまってと泣きわめくだだっ子と同じようなものだ。
衛星の正体見たり米オバマ (お粗末)
さてここまで身勝手な北朝鮮を中国やロシアはなぜここまで擁護するのか。おそらくは両国ともこの国のわがままぶりに辟易しているに違いないが、かといってこの国が倒れてしまうと朝鮮半島全部が「西側」(この表現ももう古いが)の手に落ちてしまうのでそれは面白くないため、全面支援まではいかないものの倒れない程度に支えてやっているのだろう。
それにしてもこの国の末路、どうなるのだろうか。第二次世界大戦で日本が降伏せず軍国主義を捨てずにずっと突っ走っていたらたぶん北朝鮮のようになっていただろう。しかし、日本は負けた。他に、鉄壁の独裁主義を敷いていたルーマニアのチャウシェスク政権も倒れた。この状態で永遠に続くことはないだろう。
他に似た例を探すとすれば、オウム真理教だろうか。北朝鮮は金政権を教祖とするカルトだと見れば、これまでの常識を逸した行動も説明が付くだろう。この場合、力ずくで制圧しても、国民はこれに抗うことが功徳だと洗脳されてしまっているので、まずは客観的な正しい情報を流してマインドコントロールを解いてやるのが解決の糸口かもしれない。
堅い話ばかりしてしまったので最後にやわらかく。政治の思惑に翻弄されるロケット発射と聞けば、ついついアニメ映画「オネアミスの翼」のシーンを思い浮かべてしまう。もう20年近く前の作品だが、今でも通用するクオリティ。人工衛星発射直前に、敵国が軍事侵略をはじめる中で打ち上げ、というとんでもない設定だが、何か今回の騒動に通じるものを感じる。Youtubeでどうぞ。
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コメント
ところで、これが関西方面上空を通過だったらくりりんさんどう思われましたでしょうか?私は北東北の生まれですので、気が気じゃありませんでしたよ。不祥事続きの自衛隊でもとりあえずこんなところにしかすがるものがないと思いましたです。税金投入してでも万一に備えてほしいと思いましたですよ。
古い記事へのコメントですみません。
投稿: saru | 2009/04/19 17:17
コメントありがとうございます。既に記事がトップページからロールアウトしてしまってすみません。
関西方面上空を飛んだところで、どうしようもない、というのが正直なところでしょうか。打ち上げが予定通り行けば危険性はないし、あまりにも高々度なので、どうやら領空侵犯にもならないのだそうです。
だから、ヒステリックな迎撃体勢という反応よりも、本来は、飛ばした物体が本当に人工衛星なのかの証拠を出すようギリギリと迫ってボロを出させるべきだったと思うのですが。記事に書いたとおり、本当の衛星まで作るつもりもそんな余力も一切ないと思われますので。
投稿: くりりん | 2009/04/19 22:58