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60年ぶりの帰還

フィリピンのミンダナオ島に、旧日本軍の兵士が生存しているというニュースが報じられている。
同様のケースで小野田氏や横井氏が帰還したのも既に30年以上前と、自分が生まれる前の話なので、あまりの時間の長さに途方のないものを感じる。

どうやら今でも戦線を離脱したことで軍法会議にかけられることを恐れているとかで、60年経ってもなお当時の規律に縛られているということに驚いた。今でこそ、当時の無謀な戦争、勝算なき酷い戦略、それらに基づく劣悪な作戦行動には逆らってこそ正解だし、誰もそのことを責めはしないだろうが、当時その渦中にいる一兵卒に、戦線離脱を正しいこととして認識することは非常に難しかったことだろう。

で、(一応この国にいて見える範囲では)今は戦争の状態にはないが、これと似たような状況が結構あるのではないかと思うのだ。自らの所属する大きな組織の向かっている方向が、どうもそもそも戦略的に間違っているように思われる、そしてその戦略に基づいた理不尽な命令に従うよう求められたとき、いったいそれを拒否することができるのだろうか、ということだ。

建前論としては、自分の良心に逆らってまで無茶な命令に従う必要はない、ということになろうが、実際そうすれば、例えばそれが企業であった場合は職を失うことを意味する。結局のところ渋々従うというケースがほとんどではなかろうか。

恐ろしいことだ。この国は60年程前にやった失敗をまた繰り返そうとしているのかもしれないのだ。組織が巨大化しマンネリ化してきて、その動きがおかしくなってきたときに、誰もそのことをおかしいと咎められない風土があるのだ。またしても「部分最適」がらみの話になってしまったが、目先の不利益を鑑みて萎縮する前に、常から意見する気概を失わないようにしよう。勇気を持って「王様は裸だ」と言おう。

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